日本保全学会 事務局
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材質劣化診断技術に関する調査分科会

はじめに

近年の日本のように、一大成長期を経て、経済的な安定成長期を迎えた社会においては、一頃の大量生産・大量消費という考え方を180°転回して、現有の機械・構造物を修復、更新、時には一部再生して、如何に長く安全に、かつ安心して使用できるようにすることが重要な技術的課題となってきている。この場合、時間とともに徐々に進行する材質劣化が原因となって起こる損傷・破壊過程に対する安全性や信頼性の確保が必要となるが、長時間かけて生じる材質劣化は、従来の加速試験では顕在化せず、従って、従来の知識では予 測し得ない損傷・破壊挙動を呈することがあり、従来のき裂状欠陥を主な対象としてきた非破壊検査ないしは診断手法の再検討を要する重要な問題である。

本分科会では、いわば健康診断の段階で未然に病根を絶って治癒率を上げ、早期の社会復帰を目指すように、き裂などの欠陥ないしはそのような欠陥に至る前に材質劣化部を早期発見し、補修あるいは劣化の進行抑制処置を施した上で再利用することにより、機械・構造物のディペンダビリティ*を高めることを目指し、それに必要な検査・診断技術を確立することを目的とする。そのため、主な材質劣化と破壊機構の調査研究(材質劣化)、各材質劣化に最適な検査・診断技術の開発(診断技術)、及び開発した検査・診断技術の活用方法の検討(保全計画)を、相互に関連させ、有機的、統合的に実施する。

*ディペンダビリティ: 必要な時に安全に使用できる度合

活動の方針

以下の3項目を主な活動の方針とする。
  (1) 主な材質劣化と破壊機構の調査研究(材質劣化)
  (2) 各材質劣化に最適な検査・診断技術および補修技術の開発(診断技術)
  (3) 開発した検査・診断技術および補修技術の活用方法の検討(保全計画)
本分科会では、「材質劣化」、「診断技術」、「保全計画」と保全学との関係を下図に示すように捉えている。

活動の方針図

組織

調査研究活動組織を下記に示す。(平成21年3月31日現在)

 主 査
 中曽根祐司(東京理科大学工学部)
 副主査 山下 卓哉 (日本原子力研究開発機構)
 幹 事 高屋 茂 (日本原子力研究開発機構)
 委 員 内一 哲哉 (東北大学流体科学研究所)
 
 遠藤 久  ((株)日立製作所 電力・電機開発研究所)
 
 岡 茂八郎 (大分工業高等専門学校)
  加藤 英二 ((株)前川製作所)
  欅田 理 (住友金属テクノロジー(株))
  齋藤 雅彦 ((株)マエダ)
  鈴木 隆之 (産業技術総合研究所)
  槌田 雄二 (大分大学工学部)
  寺本 徳郎 (筑波大学大学院)
  長田尚一郎 (宮崎大学工学部)
  藤山 陽一
 ((株)島津製作所)

平成19年度活動のまとめと今後の活動方針

(1)主な講演

  1) マルチコイル・リモートフィールドECT の開発について
  2) MI 素子を使用した勾配磁気センサによる構造用金属材の裏側欠陥の探査
  3) 先進磁気センサを用いた欠陥検出および材料キャラクタリゼーション
  4) フラックスゲートセンサを用いたリモートフィールドECT プローブの適用性試験
  5) 放電サンプリング装置と微小疲労試験装置
  6) IASCC 感受性の非破壊評価手法に関する研究
  7) 電磁気法による応力測定法
  8) 蒸気発生器伝熱管用センサ技術の性能要求について
  9) 画像方程式法による可視化フィールド解析に関する研究

(2)材質劣化診断技術ロードマップの作成

様々な材質劣化事象に対し、「適用可能な機器・部材」、「劣化事象」、「診断法(センサ)」、「診断法の原理(概要)」、「マイルストーン」といった区分で整理表を作成し、材質劣化診断技術ロードマップとしてまとめた。

(3)合同分科会の開催

日本保全学会研究委員会「非破壊検査技術分科会」と合同で地震荷重を受けた構造物の健全性の評価に向けた新しい研究の方向を探索すべく、以下の講演会を開催した。
講演会名:「材質劣化診断・非破壊検査の新しい展開―地震後の安全・安心に向けて―」
会期:2007年11月29日

(4)ラウンドロビン試験結果のまとめ

蒸気発生器伝熱管のラウンドロビン試験片を対象とし、平成18年度から19年度にかけて8機関においてラウンドロビン試験を行い、各機関の測定結果を整理表にまとめた。材質劣化を評価する方法としては、「①材質を直接評価する方法」、「②欠陥を介して材質劣化を評価する方法」とが考えられる。今回行ったラウンドロビン試験は、「②欠陥を介して材質劣化を評価する方法」に当たる。超音波探傷試験(UT)や渦電流探傷試験(ECT)などは欠陥検出を主体としているが、これら従来の検査手法を含めて、欠陥検出のみに留まらず、欠陥を介して材質劣化の評価まで拡張を試みることが、今回行ったラウンドロビン試験の目的である。当分科会の各機関が得意とするセンサ・測定技術により、ラウンドロビン試験を行い、傷の大きさに対してセンサの大きさを調整する必要があるといった指針が得られた。また、スミプローブなどの差動方式を用いると、傷の寸法や位置などの情報をより詳細に検出できることが明らかになった。材質劣化評価は、これまで幾多の研究者達によって行われてきたテーマであるが、状態監視保全(CBM)など、保全技術の立場に立って、その評価方法を考えることは非常に重要であり、次ステップのラウンドロビン試験を引き続き行っていく。

(5)総括と今後の活動方針

本分科会では、材質劣化評価・材質評価、具体的には、マルテンサイト変態、浸炭、鋳鉄、クリープ損傷などの評価をこれまでに行ってきた。平成18年度は敦賀にて、日本保全学会シンポジウム「高経年化対策に関わる劣化・損傷の評価技術の最前線」、平成19年度は東京にて、講演会「材質劣化診断・非破壊検査の新しい展開―地震後の安全・安心に向けて―」を開催し、予想を上回る盛況ぶりであった。また、日本保全学会学術講演会を初め、関連学会の学術講演会にて本分科会のメンバーを中心としたオーガナイズドセッションを組むことができ、本分科会の活動は、一定の成果を上げている。また、ラウンドロビン試験にて、スミプローブなどの差動方式を用いることによって、材質劣化評価に対して優位性があるといった指針を得ることが出来た。特にスミプローブに関する研究成果は、実用化段階の高速増殖炉に適用を予定している二重管蒸気発生器伝熱管の検査技術開発に反映されることになり、本分科会活動の具体的かつ重要な活動成果となった。本分科会の今後の活動方針としては、これまで本分科会で対象とした前述の材質劣化評価・材質評価を、更に広範囲、かつより一般的な材質劣化評価へ応用出来るような革新的なセンシング技術・測定技術、およびその評価方法への発展を保全技術の立場に立って試みて行くことである。

(6)その他のトピックス

その他のトピックスとして、ステンレス鋼の溶接及び深絞り製品の品質評価にマルテンサイト変態を利用した非破壊評価法を適用したことが挙げられる。各種鉄鋼材の溶接性品質評価についても保全技術の立場に立って、その評価方法を再考することが重要である。特に、高温環境下、あるいは低温環境下で使用される構造物の健全性評価は、これまで困難であるとされてきたが、非常に重要な分野である。今後、保全技術の立場に立って、高温・低温環境下における構造物の健全性評価に関しても議論していく。

(7)開催記録

第1回分科会 平成19 年7 月20 日
第2回分科会 平成19 年10 月19 日
第3回分科会 平成19 年12 月21 日
第4回分科会 平成20 年3 月 3日