日本保全学会第17回学術講演会の開催にあたって
はじめに、世界的な新型コロナCovid-19の流行のため2020年度には開催を断念した第17回学術講演会を、2021年度には開催できる運びとなりましたことを心から安堵しております。開催にあたりご助力をいただきました関係各位に心より感謝を申し上げます。
第17回では、従来からの大きな変更点が二つあります。一つめは全講演・全企業展示・全見学会をオンライン形式にしたことです。このために実行委員会の下にシステムWGが新設され、プログラム委員会とも緊密に情報交換を取りながら、オンライン形式での学術講演会を実現するためのシステムを構築しました。充分な検討を重ねた結果、参加者の皆様にご不便をおかけすることのないシステムに仕上がったと思います。
二つめは、従来の一般講演・学生セッションに加えて、提言テーマセッションを新設したことです。これは、特定のテーマに関して発表内容から成果や検討課題を抽出し、これを日本保全学会からの外部への提言としてまとめることを目的とします。具体的には一次・二次のセッションを経て三次セッションで提言が取りまとめられ、さらに学会HPによる情報公開を通じて対象機関への提言等として活用されます。なお、今回は安全規制、エネルギー問題の2つのテーマを予定しており、多くの皆様のご参加と活発なご議論を期待します。
また、東北・北海道支部が従来行っていた「保全現場からの声」セッションについて第16回では学術講演会の中に組み入れて行われましたが、今回から学術講演会の正式なプログラムとして取り扱うこととなりました。このセッションでは優秀な講演に賞が与えられます。
第16回学術講演会から2年を経て、国内の原子力発電所のうち再稼働を果たした炉は9基→9基と変わらず、また、原子力規制委員会の新規制基準適合審査に合格した炉は6基→7基と微増にとどまっています。さらに、審査中の炉は12基→11基、未申請は9基→9基と殆ど変化がなく、2年間の歩みとしては遅すぎると言わざるを得ません。コロナ禍で疲弊した経済の回復にも必須な、安定した電力供給の維持という原子力本来の使命を果たせるよう、一日も早い審査の通過と再稼働を強く望みます。
そして、このような状況の中で再稼働を果たした原子力発電所、およびすべての原子力関連企業や組織に求められることは、やはり事故やトラブルを起こさず、国民の信頼を取り戻すことです。そのために保全が出来る貢献は少なくありません。そのためにも、会員の皆様が保全に関する最新情報や課題を共有し、議論し、さらなる成果への発展へと繋げる機会としてこの学術講演会を活用していただければ誠に幸甚です。
2021年7月6日