第3回目となる今回のセミナーでは、平成20年度からの実施をめどに準備が進められている原子力発電所の新たな検査制度を取り上げる。プログラムの構成にあたっては、一日という限られた時間の中で、新検査制度の概要はもちろんのこと、関連する規格基準の整備状況や海外における動向など、可能な限り多角的な視点で最新の情報をお伝えすることを目標とした。幸いに、それぞれのテーマに最もふさわしい方々に講演を引き受けていただくことができた。
プログラムは5つのセッションから構成される。
午前中の「セッション1 全体」では新検査制度の全体像を把握していただくことを目標とした。最初に原子力安全・保安院の根井氏に新検査制度の概要について解説していただいた後で、原子力安全基盤機構(JNES)の松岡氏に新検査制度におけるJNESの役割を、また、千種氏(関西電力)には、海外における検査制度についてその特徴を明らかにしていただく。本セッションの後半では、東京電力の橋本氏に保全計画の体系化について例示を中心に解説していただく。また、東京大学の岡本氏には原子炉の停止間隔について、日本機械学会における検討結果もふまえてご紹介いただく。
午後の最初のセッションである「セッション2 ソフト」では、日本電気協会で整備が進められている関連規定指針類の改定および制定の状況について小倉氏(東京電力)にご説明いただいた後、東京大学の関村氏に原子力発電所の安全性・信頼性を確保するための重要な柱の一つである技術情報基盤の整備について解説していただく。
これに続く「セッション3 ハード」では、前半で原子炉停止中における安全対策についてご紹介いただく。沸騰水型原子炉(BWR)については山田氏(中部電力)、加圧水型原子炉(PWR)については古田氏(関西電力)にお願いした。後半では、原子力発電所の信頼性を更に向上させるための技術を解説していただく。堀田氏(四電エンジニアリング)には回転機器に対する状態監視技術を中心に、また、清水氏(中部電力)には信頼性保全(Reliability Centered Maintenance)手法について紹介していただく。
午後の後半では「セッション4 討論」としてパネル討論を行う予定である。パネリストは松岡氏(新潟県原子力安全対策課)、平野氏(日本原子力研究開発機構)、杉山氏(北海道大学)、北村氏(東北大学)、東嶋氏(フリージャーナリスト)の各氏である。より広い視野で捉えることにより新検査制度の理解に資するだけでなく、今後の課題や目指すべき方向についても議論が深まることを期待している。セミナー参加者の方からの積極的なご発言もお願いしたい。
本日のプログラムの最後は「セッション5 評価および見解」である。原子力発電所の安全性の社会的重要性を考えるとき、新検査制度が技術的に安全性の向上に寄与するかどうかという視点のみでは不十分であり、社会に十分理解され、安心して受け入れられることが不可欠である。このような観点も含め、吉川氏(京都大学)、宮野氏(東芝プラントシステム)、吉本氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)にご発言をいただく予定である。
セミナーの企画に携わった者の一人としては、密度の高いプログラムとなったと感じているが、一方で各講師の方の講演時間には制限がある。幸いに、各講演者の方には詳細な説明資料を提供していただくことができた。セミナー終了後に本資料をご活用いただければ幸いである。
最後になるが、講演者および座長の方をはじめとして本セミナーにご協力いただいた方々、関係機関の方々に心より御礼申し上げる。
また、日本保全学会事務局にはセミナーの企画の段階から大変お世話になった。記して感謝の意を表する。