日本保全学会第11回学術講演会の開催にあたって
本学会が発足して10年が経ち、新たな10年がスタートしました。
平成23年3月11日の「東日本大震災」は、私達に“保全”の重要性を強く知らしめたものでしたが、未だ大きな爪痕は消えず、残念ながら原子力発電所は、1基も再稼働できていない状況です。しかし、一方、それでも自然の営みは続いています。東北の海岸線は、少しずつ美しさを取り戻しつつあり、自然の保全の力には改めて大きなものを感じます。“保全”とは、なにがあってもの毎日毎日の営みであり、大切なものです。一日なりとも休んではいけません。保全は継続することが大切なのです。
第11回の学術講演会は、初めて燃料サイクルの地で開催することとしました。原子力として、燃料サイクルの重要性を理解するとともに、このサイクルを含めて原子力発電のフロントからバックエンドまで俯瞰し、課題について広く目を向けて正しく議論されることを願うものです。
学術講演会では、100件を超える講演申込をいただきました。保全活動は運用、運転の基盤です。設備が止まっていても、運転の準備や安全確保のための技術開発はもちろん、点検や補修などの保全の行為そのものも止まることはありません。学術講演会を通じて保全に関する情報を交換すること、技術や課題を共有すること、現場と学術界が議論をすることは、保全技術の高度化にはもちろん、設備の安全確保には欠かせない重要な機会と考えます。その意図を踏まえ、多くの保全関係者にご参加いただいたことに、プログラム委員長として厚く御礼申し上げます。
一方、福島第一原子力発電所の大事故により、現在もまだ多くの方々には、様々にご負担をおかけしている状況でございます。私たち原子力に関わるものとして、原子力利用での安全性向上に向けた努力を続けていかなければならないと痛感するものであります。日常の保全活動は安全の基本です。事故が起きた場合への備えにも十分な準備が必要である、ということも学びました、過酷事故が発生したとしても、事故を収束させることができるという保全活動へと展開して行くことが、重大な責務と考えるものです。
末筆ですが、プログラム編成、講演論文集の編集・発行にあたり、実行委員会、プログラム委員会、日本保全学会の事務局の方々に、多大なご支援・ご協力をいただきましたことに、深く感謝申し上げる。
2014年7月23日