日本保全学会第8回学術講演会(特別編)の開催にあたって
標記学術講演会の開催準備中の3月11日に東日本大震災が発生しました。残念ながら、その事態の重大性から当初の計画を中止することになりました。本学術講演会に協力していただいた関係者をはじめ会員各位に多大なご迷惑をおかけしたことを、この場をお借りして心よりお詫び申し上げます。また、学術研究の発表と討論の機会の重要性を考え、「特別編」という形で改めて開催することになりました事情もご賢察いただければ幸甚です。
東日本大震災は、その被害が甚大であったことに留まらず、日本の政治。経済をはじめ多くの問題を我々に投げかけました。特に、東京電力福島第一発電所の災害は、原子力エネルギーに対する国民の意識に大きな影響を与えました。原子力発電に関する政府の対応や政策も大きな転換を迫られています。しかし、原子力やエネルギーに関する政策は、国民受けをねらった小手先の対応では、混乱を起こすことは明白です。どんなエネルギー手段においても、科学・技術の裏付けがあり、それを支える十分な人材、実績と手立てが必要となります。このような時こそ、原子力発電をはじめプラントの保全に関係する科学・技術は、国民の安全の面から不可欠な学問分野であり、保全学の新たな展開がますます必要とされています。さらに、保全の科学・技術は、それを発揮する人がいてはじめて現実社会に生かされます。保全学会および学術講演会の存在意義は、そこに依拠しています。
今回の震災を教訓として、安全が確保できる新しい枠組みも検討しなければなりません。本学術講演会(特別編)の開催においても、従来の在り方を大きく変えて、国民の期待に応えるように努力しました。そのことは、特別企画の内容に如実に現れています。保全学会の会員に留まらず、保全に係わる技術者や研究者においても、広い視野からエネルギーや発電について客観的かつ多様な意見を含めて討論し、確かな展望を形成して行く必要があります。また、福島第一発電所災害の原因や教訓を少しでも共有し、国民の安全にゆるぎない信頼を形成することは論を待つまでもありません。本学術講演会が、その一助となればと期待しています。
プログラム編成、講演論文集の編集・発行にあたり、プログラム委員会、日本保全学会の理事・事務局の方々に、多大なご支援・ご協力をいただきました。末筆ですが、心より深く感謝申し上げます。
2011年10月21日