日本保全学会第5回学術講演会の開催にあたりまして
標記講演会は原子力発祥の茨城県にて、日本原子力研究開発機構等の全面協力を得て、行うこととなりました。水戸の千波湖のほとりで、偕楽園、水戸藩憩いの庵である好文亭を仰ぎ見る水戸市民会館での開催となります。
今回は最高数の130件の講演を得られることとなりました。この分野の重要性と関心の高まりを表すものと考えます。なんと申しましても昨夏の新潟中越沖地震と柏崎刈羽発電所の状況が原子力にとって最大の関心事でありましょう。本稿の執筆の直前にも平成20年岩手宮城内陸地震が起きました。今日本は地震頻繁期に入ったとも言われております。その折の第5回目の節目の学術講演会を迎えることはなにか因縁めいたものも感じます。一般講演の充実に加え、プログラム委員会、実行委員会で議論を重ね、特に第1日目の基調講演、特別企画を重要視いたしました。特別企画では「耐震に係る保全」を取り上げ、行政と学術界から代表して、最新の情勢をご講演いただきます。石油を初めとする資源がかつてない価格高騰にもまわれたこの時期に、原子力委員会近藤駿介委員長から、わが国におけるエネルギー戦略に関する基調講演をいただけることはとても意義深いものと考えます。その後のパネルディスカッションでは「生活の中の検査と安全」のテーマで、身近な住居の耐震、食品の安全、航空・宇宙技術と比較しながら、メディア・リスクコミュニケーションにも言及し、保全技術と国民の皆様の理解との接近を皆で考えたく存じます。これら3つの企画は大ホールで一般の方々にも広く参加していただき、エネルギー問題、地震対策、保全検査の理解に役立てていただけることを期待しております。
昨年開始いたしました産学協同セッションにおける研究コンペも行い、特に若手の技術者の方々に技術を競っていただく場も継続して設けています。さらに特別セッション「原子力論点評価会議」も企画いたしました。
以上のように量・質ともに充実を図れたと考えております。プログラム編成、講演論文集の編集・発行にあたり、実行委員会、現地実行委員会、プログラム委員会、日本原子力研究開発機構の皆様、日本保全学会事務局の方々、東京大学原子力国際専攻の学生・職員に、多大なご支援・ご協力をいただきました。末筆ですが、深く感謝申し上げたいと存じます。
2008年7月10日