原子力発電所に対する新検査制度は本年1月1日に関係省令が施行され、4月1日以降に定期検査に入るプラントから随時保安規程が原子力安全・保安院に提出され、審査が行われている段階です。
この新検査制度においては、「現在停止中に集中している検査に加え、運転中の検査を強化していく」ことがポイントの一つであり、状態監視技術が占める役割は大きく、プラントの保全の質の向上に大きく貢献することが期待されているところです。
このような時期に「状態監視技術の高度化に向けて」と題してセミナーを行うことは非常に時機を得たものであり、関係各位に有益な情報を提供できるものと考えております。
第一部では、吉岡武雄様に「振動とAEによる転がり軸受けの診断」と題して、明治大学学術フロンティア推進事業のプロジェクトで蓄積された軸受試験等による豊富なデータに基づく診断技術について、講演をしていただきます。
第二部では、「状態監視技術への取り組み」というテーマに基づき、前川之則様に新検査制度における状態監視技術の位置付けについて、また前原隆文様に新検査制度実施後の状態監視保全に係る検査員の研修計画について、講演していただきます。さらに、上坂充様に日本保全学会で行っている軸受劣化加速試験の途中経過について報告していただきます。
第三部では、「状態監視技術の現場適用にむけて」というテーマに基づき、まずは技術者の資格認定制度の現状に関して、振動診断技術者の資格認定制度について岩壺卓三様に、トライボロジー技術者の資格認定制度について似内昭夫様に、講演していただきます。また、原子力業界における状態監視保全への取り組み状況について、長谷川彰様に原子力発電所での取り組み状況ついて、日隈幸治様にプラントメーカでの取り組み状況について、講演していただきます。
第四部では、すでに状態監視保全に長年取り組んでおられる産業界の現状について講演していただきます。武田展雄に航空機複合材料のヘルスモニタリング技術について、日笠久和様に化学プラントにおける状態監視技術について、山田浩文様にサーモグラフィー技術について、橋本高明様に舶用機器の状態監視技術について、それぞれ適用事例に基づいて現状と今後の展望等を紹介していただきます。
第五部では、パネル討論「状態監視技術の有効性に関する徹底討論(そのⅡ)」と題して、第4回保全セミナーでの「状態監視技術の有効性に関する徹底討論」を引き継ぐ形で議論を深めていきます。今回は状態監視保全に先駆的に取り組んでおられる産業界の方々をパネリストとしてお迎えしており、豊富なデータや貴重な経験に基づいた議論が行われるものと期待しています。
状態監視保全に取り組まれている各産業界の専門家の方々が一堂に会して情報交換できるこのセミナーは、状態監視技術の高度化/設備の信頼性向上に向けてまたとない機会だと思います。本セミナーが、産業界を横断して状態監視技術の情報共有化に向かう動きの一助になれば幸甚です。
最後に、講演者及び座長の方をはじめとして本セミナーにご協力いただいた方々及び関係機関に、心よりお礼を申し上げます。また、日本保全学会事務局の皆様には本セミナーの企画段階から大変お世話になりました。記して感謝の意を表します。