福島第一原子力発電所の事故からすでに10ヵ月が経過しました。プラントは安定した冷却状態が維持され、廃炉に向けた新たなステップに進みつつありますが、現在も避難を余儀なくされている方々をはじめとして被害をこうむられた皆様には原子力に関わってきた者として申し訳ない気持ちであり、深くお詫び申し上げます。
事故発生以来、様々な視点から事故の分析・評価や対策等について議論がなされ、各プラントでは緊急時対策等が迅速に実施されてきていますが、「保全」の体系化を積極的に進めてきた保全学会として、福島事故を乗り越えて原子力の新しい展開を図るべく、事故を「保全」の観点から分析・評価する場としてのセミナーを企画しました。「保全」を軸として「何をしていれば防ぐことができたか」という視点で分析・評価し、事故の教訓として、今後「保全」として何を考え、国民の皆様に「安心」してもらうために何をすればよいか、を皆様とともに考えていきたいと思います。ここでいう「保全」とは、単に機器の保守管理のみならず、安全で安定した運転を維持するために必要な設備対策やシステム構築さらには関係者の教育・訓練や意識改革といった広範囲のプラント維持活動を包括するものと考えています。
第一部では、「保全の役割」と題して、「保全」の観点から事故と津波対策に関する分析・評価及び提言について講演いただきます。
第二部では「裕度の把握」と題して、これからの「保全」を考えていくうえで、想定外事象に対する裕度はどう考えていけばよいかという観点から講演いただきます。
第三部では「外から見た福島事故」と題して、米国及びマスメディアから見た福島事故の分析・評価及び提言について講演いただきます。全米原子力学会フェローでもあるChapin 氏は、日本の原子力事情に精通し、日本の事故対応と今後に非常なる危機感を持たれており、忌憚のない意見をいただけると期待しています。
パネルディスカッションは「「保全」で“安心”が得られるか」というテーマでマスメディアの方々にも参加していただき、原子力と社会とのかかわりのなかで、“安全”を“安心”に結び付けるためにどうすべきかという課題を議論していただきます。
尚、本セミナーでは、初めての試みとしてWEB中継を行います。聞きたくても参加できない遠隔地の発電所の皆様等に利用していただければとの思いで計画しました。中継トラブル等の一抹の不安はありますが、活用いただければ幸甚です。
最後に、講演者及び座長の方々をはじめとして本セミナーにご協力いただいた方々及び関係機関に、心よりお礼を申し上げます。また、日本保全学会事務局の皆様には本セミナーの企画段階から大変お世話になりました。記して感謝の意を表します。