2011年3月11日の東日本大震災に起因する福島第一原子力発電所の事故から、まもなく5年になる時点で、今回の5回目の保全セミナーの開催となります。事故後5年の節目を迎える状況のなかで、未だに故郷に戻ることができず、避難生活を強いられている方々に心よりお見舞いを申し上げると同時に、一日も早い帰還ができますように、全力で復興の支援を進めて参りたいと考えております。2014年6月1日に東京商工会議所東商ホールにて、福島県日野町の遠藤 智町長殿はじめ地元関係者にもご出席いただき、「福島復興シンポジウム」を開催致しました。
日本保全学会では、保全学の実践として、地球環境保全や原子力発電所やエネルギープラントの予防保全や事後保全に取り組んでおりますが、事故後の地元の皆様の復興や規制側への専門家集団としての提案も保全学の実践であると考えております。
2013年7月に施行されました世界最高水準の安全性の確保を強く求める新規制基準のもとで、原子力規制委員会で原子力発電所の新基準適性の審査が進められ、九州電力川内原子力発電所1号機及び2号機、関西電力高浜3号機が再稼働し、同4号機と四国電力の伊方3号機の慎重かつ順調な再稼働を願っております。後続のPWRについても、本学会で具体策を提案した型式化・重点化による複数の発電所の同時審査が進んでおります。また、東京電力柏崎刈羽6,7号機の審査が進んでおり、後続のBWRの審査も型式化により審査が加速することを強く願っているところであります。40年超運転についての審査についても審査期間が極めて短い現行の基準をクリアするためのケーブルの難燃化対策が鋭意進められております。
このような中、今回の第16回保全セミナーにおいては、「原子力規制の現状と課題:信頼される原子力規制を期待して」と題して、第一部(津波/地震等の自然現象への対応)では、①福島第一原子力発電所の最新の公開データに基づく事故の検証、②津波のような想定を超える事象の思考実験の重要性、③断層問題とリスク、第二部(新規制基準への適合審査状況)では、④事故シーケンスと設備の有効性評価、⑤伊方3号に対する愛媛県の対応、⑥特定重大事故等対処施設の基本要件と代替対策など、NRAの審査開合の中で進められている数々の審査項目や地元自治体の取組についてご紹介いただきします。
これらの成果を活かすべきは、保全学の理念に沿って科学技術の評価を基に、原子力発電所の安全の推進を適切・合理的に行うことであり、これは原子力規制委員会とも共通の目標であります。何人もこれを否定できるものではありません。本セミナーが、皆様の安全性向上に向けた真摯な活動を進めて行くための一助となれば幸いです。
最後に、講演者および座長の方々をはじめとして本セミナーにご協力頂きました皆様ならびに関係機関に心より御礼申し上げます。又,日本保全学会事務局の皆様には本セミナーの企画段階から大変お世話になりました。記して感謝の意を表します。