近年の計算機性能の向上に伴い、人工知能(Artificial Intelligence: AI)が目覚ましく進歩しています。人工知能の分野の1つに機械学習(Machine Learning)があります。
機械学習とは、人間が自然に行っている学習能力と同様の機能をコンピュータで実現しようとする技術であり、画像認識、音声認識、自然言語処理、リスク予測などの分野で大成功を収めています。
身近な例では、各自動車メーカーが開発している自動運転技術のように、画像認識や音声認識によって通行人、対向車、信号、標識の認知や、先行車発進検知を行うなど、人間と変わらない認識をコンピュータが代理で行う時代になっています。また、コールセンター・オペレーション業務のAIによるサポートのように、顧客との会話内容を分析して問題解決のための情報を提示することで、顧客の満足度向上に繋がった例もあります。さらに原子力規制委員会は、電力会社から事前説明を受ける「ヒアリング」での職員とのやり取りを、AIによって文字起こししてホームページで公開することの試験運用を、本年4月から開始することに決めました。
このような他産業界等の状況から判断するに、我々原子力界にとっても積極的にAI導入を推進すべき時期がすでに到来していると見るべきでしょう。
この一因は、過去には日本の科学技術の最先端を積極的に開拓していた日本の原子力産業が、いつのまにか保守的な思考の虜になり、新しい技術の導入に慎重になりすぎていた事にあるのではないかと考えられます。またもう一つの要因として、どこにどのようにAIを導入すれば原子力の役に立つのかという明確なビジョンが、まだ我々の中で必ずしも共有されていない事もあるでしょう。
このような状況を改善するために日本保全学会では、遅ればせながらAI導入の意義と効用の議論および情報収集活動に着手しました。本セミナーはその第一弾目の活動であり、参加者の皆様への最新情報と侃侃諤諤な議論の場をご提供することができれば幸いです。
最後に、後援者を始め、本セミナーにご協力頂きました皆様ならびに関係機関各位に心よりの御礼を申し上げます。また、日本保全学会事務局の皆様には、企画段階から大変にお世話になりました。この場を借りて御礼を申し上げます。