対象物の実応力を非破壊的に評価する方法としては、結晶による回折現象を利用する方法がもっとも有効であり、現在、X線応力測定は、均質等方多結晶体に対して一般的手法として普及している。しかし、均質等方多結晶体の仮定が成立しない粗大粒(微小領域)、集合組織および溶接材の応力測定については、X線応力測定の困難対象として未だに残されたままである。
これら対象物の応力測定には2次元検出器が必要となるが、2次元検出器の基礎的な手法や手続きは曖昧にされ整理されていない。また、日本では、2次元検出器によるX線応力測定に関する書物は見当たらない。
以上の状況に鑑み、本書では2次元検出器によるX線応力測定の現状をまとめた。従来から提案されているcosα法や2D法に加え、直接法や回折斑点追跡法などの新しい測定法についても詳しく述べている。また、粗大粒や溶接材の具体的な問題を示し、今後の課題について整理した。
―本書「序」より抜粋―