「保全標準化推進検討会」の設置について
2020年6月発刊
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原子力発電所の保全活動を適正化するために必要な基本的事項とその解説(JSM MSP 001)
抜粋)
「本書は保全技術者、保全研究者あるいは保全の専門家を志す若手の技術者、研究者の入門書となることを意図して作成しました。また、保全の専門家が時に保全の基本に立ち戻って考える必要が生じた際の参考となるような書、あるいは保全以外の技術者、研究者が保全の本質と基本を知る上で参考となるような書をイメージして執筆しました。」
1.設置の趣旨と目的
福島事故以降、新規制基準に基づき安全審査されていた原子力発電所が徐々に運転再開を果たす中で、今年に入ってから規制当局は新検査制度の確立のために検討を開始している。これまでの日本保全学会と規制当局との意見交換によると、規制当局は米国のROP[1]制度をほぼそのまま導入して新検査制度を確立する意向で詳細な調査・検討を進めており、今後3年程度の超‣検討と試運用を経て、平成32年から実運用する予定としている。
米国のROP制度は原子力発電所の安全性に集中特化し、一定レベル以上の安全性を確保することはもとより、継続してそれを向上させるため、恣意性を極力排除した客観的な評価手法と判断基準に基づき検査及び評価する枠組みとなっている。このような検査制度の枠組みが我が国に導入されれば、従来に増して安全を重視した対応が必要となり、安全性への影響度(重要度)評価とその影響度に応じたSSC[2]や人的操作・措置を行うことが徹底されるようになる。またそれだけでなく、その技術的根拠を明確にすることが求められるようになる。このようなROP制度においては事業者、規制当局ともに高度な技術力が求められることになる。
一方、原子力発電所の保全は発電所の安全性に最も大きな影響を与える活動の1つである。また、我が国の保全のやり方は分解点検を中心とした経験的やり方であり、先進諸外国と比較すると、保全のために長期のプラント停止と膨大な作業量(多額の費用)を必要とするものとなっており、科学・工学をベースに客観的アプローチを取り入れれば大幅に経済性を向上させることができる分野である。さらには、基礎工学、応用工学等を基盤に標準や規格・基準が体系的に整備された「設計・製作」の分野に対し、標準化・規格化が大変遅れた分野でもある。現時点で全体を見渡しても保守管理規程(JEAC4209)、維持規格(JSME S NA1)などが制定されているのみである。このような実態は、ハードウェアに起因するトラブルが減少した一方でヒューマンエラーに起因するトラブルが減少しないことの原因の1つであるとも考えられる。
以上のような状況を踏まえると、技術的根拠を明確にしながら原子力発電所の安全性を向上させため、保全に関する標準や規格・基準等を体系的に整備する時期が来ていると考えられる。
[1] Reactor Oversight Process
[2] Systems, Structures and Components
2.検討会の設置
プラントの安全性/経済性を効率的効果的に向上させるために必要な保全に係わる各種事項を標準化するための具体的方法を検討するため、日本保全学会内に「保全標準化推進検討会」を設置する。
3. 設置の背景
これまでの我が国における原子力発電所の保全を振り返ると、ハードウェア中心の対応がなされてきており、保全の人間系に関する対応は必ずしも十分でなかったと言える。また、現在検討されている新検査制度下では、従来よりも格段に高度な保全を求められるようになることが予測される。
このような状況を見ると、これまで必ずしも十分検討されてこなかった保全に関する標準や規格・基準等に焦点を当てた検討が必要な時期が来ていると考えられる。このため、中立の立場から技術的根拠の明確な保全に関する標準や規格・基準等を開発し、社会へ発信するため、「保全標準化検討会」を日本保全学会内に設置する。
なお、検討会は、本年8月に開催された日本保全学会第14回学術講演会の「補修技術」セッションにおいて行われた発表および議論に基づき設置するものである。
4. 検討会の概要
[Ⅰ]実施内容
下記の標準化、規格化、ガイドライン化あるいは解説書作成について検討する。
整備すべき保全規格・基準類の体系的な検討と抽出
- 保全の構造体系に沿った整備すべき規格・基準類を体系的に抽出
- その中から本検討会で検討する事項を選定
図 1 保全の構造
[Ⅱ]本検討会で検討する個別の検討項目(検討会の議論を踏まえて決定する。)
- 保全計画/予防保全テンプレート
- 主要機器の数例について検討
- 保全遂行能力
- 要領書、作業員、使用資機材の3要素とその組合せで発揮されるもの
- 3要素それぞれに期待されるものを整理
- 保全管理プロセス
- 望ましいプロセスと管理項目の整理
- 保全遂行能力のベンチマーキング活動
- ベンチマーキング活動の意義
- ベンチマーキング活動の手順、方法、注意点などを整理
- 保全情報コミュニティ
- コミュニティの意義、情報共有内容、方法など
- コミュニティ立ち上げの検討
- 米国の例の分析検討(米国圧縮空気系統に関する原子力ユーザーズグループCANUG等)
- 保全現場のやる気、遣り甲斐の促進
- 保全関係者がやる気を起こせる、やる気を持てる環境整備
- 「補修」「取替」「改造」「劣化緩和」の定義
- 保全に関する認証認定制度
- その他
[Ⅲ] 実施時期
平成29年10月から平成31年3月までの1年半とする。
検討状況を見て、必要に応じて実施期間を延長する。
[Ⅳ] 実施時期
日本保全学会会員の中から検討会メンバーを公募する。
第1回検討会において主査、副主査および幹事を互選して決定し、検討会を運営する。
日本機械学会維持規格関係者等の本件関係者については、オブザーバ参加を認め、有意義な議論ができるようにする。
[Ⅴ] 活動予算
なし。(ボランティア)
報告書印刷等の予算が必要となった場合は、その時点で企画運営委員会に提案する。